待てども待てどもショップを離れようとしないあたしに、痺れを切らしたのか。



「いつまでいるつもりだ」


「へ?」



 突然後ろから掛けられた声に、ついびっくりしてしまう。



 どれくらい経ったのかと頭の中に疑問符を浮かべるあたしの目の前に、氷室君は自身の腕時計をかざす。経過時間、賞味十分。


 あたしってば、十分もこのぬいぐるみたちを愛で続けていたのね……と、自分自身で呆れる始末。


 この間抜け具合にもし慣れられたら、それこそ恥ずかしすぎる。しかし今すぐ脱却しなければと思ってもそううまくは行かない。


 三つ子の魂百まで、と言うけれど、これがもしあたしの「三つ子の魂」だったら、どうすればいいのか。



「……イルカ、ショーあるらしいけど」


「え、本当!?」



 ―――こればかりは、後から思い返しても恥としか言いようがないほどの、素早い返事だった。


 二人で、会場へ歩き出す。


 言い方がどんなに素っ気無くても、それでもいい。この時間を、氷室君が向ける想いを、あたしが独占している。


 きっと何物にも代えられない、幸せ。