「……帰ってもすること無いし、気が向いただけ」



 まるで、期待するなと言わんばかりの台詞。それでもあたしはめげない。



「でも!嬉しいのっ!!」



 精一杯気持ちを表現する。それしかできないから。


 好きな気持ちを伝えることしかできないくらい、一杯一杯だから。


 いくら冷水のごとき言葉を被ろうが、あたしにはもうそれだけで。



「…じゃ、どこ行く」



 呆れたようにあたしに尋ねる声も、愛しくて仕方がない。


 けれど、それより今は、何も考えていなかったために焦って思考を巡らせるのが先。



「え…じゃぁ……」



 いざ聞かれると、どうしても迷ってしまう。何せ、二人で出かけるのは初めてなのだから。


 絶対、楽しいデートにしたい。


 氷室君がどれだけ素っ気なくとも、あたしが何とかしてみせる。


 願わくは、彼にとっても忘れがたいものに。悪い意味でなく。