「帰れ」、そう言われる気がしてならない。


 貯金が懸かっているのだから、ここは早く、はっきりとして欲しいものだ。


 果てさて、どちらか。



「だから……」



 早く言ってくれ。どっちなのか。


 これではまるで、貯金が大嫌いみたいでは。浪費癖のためにあるだけ使ってしまう人みたいではないか。


 いっそそれでもいい。とにかくはっきりしてくれ。


 周囲の目はなおもあたしたちに向けられていて。どちらが主なのかは、言うまでもないけれど。


 ただ、その中で自分はこんなことを考えているのだと思うと、少し恥ずかしくなった。


 この時点であたしは、すでに決め付けていた。


 帰れ、そう言われると、そうに違いないと。だから―――



「どっか行くか?」




 ―――告白を受け入れてもらった時以上に、耳を疑った瞬間だった。


 これは、夢か現か。信じられない。


 どっか行くか?確かに、そう聞こえた。氷室君から、こんな言葉を聞く日が来ようとは、誰が思おうか。


 あーちゃん、あたしの頬を引っ張るなら、今だよ。