そんな彼と、教室がだめなら、一体どこで会話をするのか。


 お昼休み、お弁当は一緒に食べている。これはあたしの、必死の説得の賜物。


 この権利を手に入れるための、血の滲むようなあたしの努力。今思い返しても、感動ものだ。


 ただし。


 そう、「氷のプリンス」とまで言われる彼と付き合うには、ただし文があるのが当然のこと。



「―――卵焼き甘すぎ」



 非常に苦労した交渉。その結果、あたしは彼の分のお弁当も作ることになった。


 先に言わせて欲しいのが、決して料理は得手ではないということ。


 そのためか、毎日頑張って作っているというのに、酷評。



「ご飯は少し固くて水っぽい。炊いてる時間が短いからこうなる。野菜炒めも胡椒と塩のバランスが悪い。もう少し胡椒足していい」



 評論家かと突っ込みたいほどの、鋭い指摘。毎日あたしの心は、この評価に滅多打ちにされる。


 すでに、ずたずたのぼろぼろ。



「……だって、料理苦手なんだもん」



 口を尖らせて、一言小さな文句。