「―――及川」


「……何?」


「ここ無理。場所変える」



 瀬能君の事を話しているときのあーちゃんと同じような目を、していたから。


 期待していたのに、思わぬお預けを食らってしまった。



「じゃ、じゃぁ…裏、行こう?」


「………あぁ」



 ゆっくりモールの裏のほうへ、足を進める。


 地面を踏みしめる回数、脈打つ速度は増していく。


 関係者以外立ち入り禁止のチェーンがされているところまで、数十秒で着いた。


 当然のように、人はいない。



「……ほら。誰もいないよ?言ってよ、さっき言おうとした事…」


「及川って、そんな性格だったか?」



 なんだか失礼すぎる視線をあたしにぶつけてくる氷室君は、なかなか酷い。



「だって、氷室君があたしの台詞取ったんじゃん」