「山浦と約束してたのか?」


「あ、うん…でもこれ……」



 ――違う。今言いたい事は。


 今言わないといけない事は、これじゃない。



 伝えないと。



「……っあのね」


「言うな」



 …伝えたい事なんて一文字も発さないうちに、止められて。


 そうだよね。


 やっぱり、もう駄目か…。



 泣きたくなるのは、半分生理的に。


 だけどあたしは、一度閉じてしまった口を再び開く。



「氷室く……っ」


「言うなって」



 またも遮ってしまってから。


 …氷室君は、あたしの腕を引く。


 変に開いていた距離が、ようやく話す程度に変わる。