―――――一方、モール西口。


 恭一は当然、顔には出さずとも苛々を募らせていた。


 なぜここに来させられたのかも、なぜこんなに何かを待たなければいけないのかも、全て不明。


 ストレスなど、溜まって当然だろう。



 しかし恭一もまた知らない。


 アゲハが待っていると思い込み、悠々と電車に乗った一香が、正にここへ向かっている事を。


 彼女はその指を最大限に急がせて携帯のキーを打っているが、その相手は待っておらず。


 確実に恭一にはその内容は伝わらない。


 ……これもまた、当然だ。



 恭一は無意識に溜息を漏らす。


 その仕草にすら多くの通行人が振り返り、また足を止めていることに、彼自身は全く気づいていない。