「及川さん、ここの問題」


「え?」



 突然名前を呼ばれ、あたしはかなり動揺してしまった。


 かなりわざとらしいくすくす笑い。


 聞こえよがしに、聞いてなかったのかな?なんて、声が。



「聞いてなかったの?」


「あ…すいません」



 こんな空気で顔を上げてなんていられなかった。


 あることないこと、きっと言われていないようなことまで。


 頭の中をぐるぐると回り続ける言葉、それに対する恐怖。


 机の下で膝が震えるのに乗じて、涙が手の甲に、とうとう。



 堪えないといけないといくら言い聞かせても、その水滴は一切言うことを聞くことはない。