氷室君に別れを告げたあの日に、出来ることならば。


 この気持ちも置いてこれたらよかったのに。


 後悔してることがこんなことだと知れたら、とうとう戻れなくなってしまうだろうけど。



 ―――こんなに傷つくことも、なかった。



 それでも、あたし自身が。


 他の誰でもなく、あたしが。


 彼のことを好きになってしまったのだから。



 いつの間にかへたり込んでしまっていた身体をゆっくりと起こして、立ち上がる。


 教室へ、ゆっくりゆっくり歩いていく。


 一歩進むごとに、全身の質量が増えていくような、妙な感覚。



 あたしじゃなくても、よかったの?


 あの子と話しているところなんて、一度たりとも見たことがない。


 あたしだから、じゃぁなかったのかな。



 …一度も「好き」って言葉、もらって…ないもんね………。