辛くないと言えば、嘘になってしまう。


 けれど、一切後悔なんてしていない。



 瀬能君と帰るようになっていたあーちゃんが、今日はあたしと帰っている。



 どこかであたしは遠慮していたのかもしれない。


 あーちゃんと瀬能君に。



 氷室君のことが好きなのに、また「王子」という形であたしの中にいる。



 もう、あたしの…「彼氏」でなく。


 「元彼」と置くことも、辛くて。


 全部、何もかも、好きだから。



 気持ちを見つめなおすことなく、すっぱりと諦められれば一番楽なのに。


 既にこの気持ちも、氷室君の記憶も、あたしの一部だから。


 何もかも、消せない。消えるはずがない。


 こんな強い思いは、初めてのものだから。