「何だよ、いきなりぼーっとして」



 投げられた質問。いつもあたしばかり、変な間を作るまいとしてしゃべっているから、違和感があったのだろう。


 でもそれは、氷室君からはほぼ全く話を振ってくれないからで。


 あたしが、常時話していないと落ち着かないだとか、そんな性格なわけではない。



「別に…何もないよ?」



 ぼーっとしていたとか、そんなのではなくて。氷室君のことで、頭が一杯だったのに。


 あたしの中で起こる変化、不安も期待も何も、氷室君は分かっていない。


 それも、あたしが彼に何も伝えていないからなのかも知れないけれど。こんな片想いまがいの状態で、何を告げられようか。



「じゃ、俺食い終わったから」



 脳内の回線がパンクしている間に、氷室君のお弁当箱は、いつの間にか空に、


 それだけ置いて、いつものごとく彼は教室へ戻っていった。



 褒めてもらえた。


 冗談ぽくは無いけれど、でも、少し冗談らしいやり取りも出来た。


 不満に思う事なんて、何一つ無いはずなんだ。