「―――一香」



 いつもの呆れた声とは異なった、心底心配げなあーちゃんの声が聞こえてきた。


 何があったの?そう聞かれて数秒、あたしは黙ったまま。



 どう返せばいいのか分からない。丁度幸せ一杯のはずのあーちゃんに別れ話なんていいたくない。



 余計心配させてることに、あたしは気づけずに。



「本当に何も無かったの?戻ってきてからずっとこうじゃない」


「んー……」



 教室の一角。


 あたしは一人、じめじめした空気を放っていた。


 机くらい、カビが発生するのではないだろうか。