何も、真顔で「食うぞ」なんて言わなくても。


 笑いながら言ってくれれが、冗談として受け入れられる。けれど、その表情も声も、まさかそうとは思えなくて。


 ……でも、素直に、嬉しかった。


 こんなやり取りで喜んでいるあたしの感覚は、いまだ片想いで。いっそそれでもいいくらい、嬉しい。


 ただやはり、氷室君の気持ちは、一切見えないままで。


 戸惑う気持ちは、膨らむばかり。


 氷室君は、あたしのことを、どう思っているのだろう。


 戸惑いだけでない、疑問は更に大きい速度で。あたしの中のほとんどを占めてしまいそうなくらい。


 そもそも、もしかしたら贅沢なのかも知れない。


 恋人同士だから気持ちが通じ合うなんて法則は一切無くて、単に氷室君が極端なだけで。


 みんなも、あたしが知らないだけで、こんな不安を抱いている可能性は十分ある。


 そんな中、気持ちを知りたいなんて、贅沢極まりないことなのかも知れない。