「あ…ありがと」


「きんぴらはまだまだだけどな」



 お礼を言って、間もなく釘を刺されてしまった。


 きんぴらごぼうは、全くといっていいほど作り慣れていない。


 過去を振り返っても、おそらく五回未満。


 返す言葉を失ったあたしは、悔しさやら何やらがない交ぜになって、口を尖らせ俯いた。


 口を尖らせるのは、あたしが拗ねた時の、癖なのかも知れない。


 俯くのはどうだろうか。少し心がしぼんだ時、とか。


 だなんて考える時間は実際はほとんどなくて、降りかかってきた言葉に、即時顔を上げることになるのだけど。



「……顔上げろ。お前のも食うぞ」


「それはやだ!」



 性別なんて関係ない。ハードな毎日を過ごす女子高生、空腹が常でもおかしくない。


 あたしもまた、食欲に溢れている。


 慌てて自分のほうに、弁当箱を寄せる。