少しでも、ほんの少しでも、氷室君のそばにいたいから。


 そばにいるって、思い込んでいたいから。


 あたしが作った、美味しくもないお弁当を一緒に食べてくれる。それだけで、すごく嬉しいから。


 切なくても、苦しくても、好きだから。



 ―――欠伸をする様子が、この距離でも見て取れて。


 今日は眠そうだな、と心配になる。寝不足ではないだろうか。


 だなんてことを考えてしまう時点で、あたしは彼のことを相当好きらしい。


 視線を逸らす間など、一切存在しない。


 強力な磁石に、吸い付けられた鉄釘。


 そう思うと、なぜか心の芯が、じんわりと温まるような、そんな感覚になる。



 時間は一足飛びに、気付けば昼休み。



「……これ」



 開いたお弁当、すぐに氷室君が反応を示したのは、たこさんウインナー。


 あたしは無意識に身構える。


 氷室君が何かに反応した時は、基本的に何らかの指摘。