敷地内に入った途端に湧いてくる緊張。


 氷室君のご両親なんて、絶対美形夫婦に決まっている。


 まさかこの氷室君の彼女が、平々凡々のどこにでもいそうな女子高生の代名詞だなんて思ってもみないのだろう…。



 なにやら高級そうな装飾のされたドアを開き、氷室君が中に声を投げかける。



「…ただいま。連れて来たけど」


「本当!?」



 その声への返答は、正に大人の女性な、落ち着きのある綺麗な声。


 緊張がますます高まり、あたしはつい氷室君の背中に身を隠した。



 氷室君が入ってからも、あたしはどうすればいいのか戸惑っていたところ。



「入って入って!」



 先ほどの声があたしに呼びかける。