「付き合ってください!」
人生一大決心。玉砕覚悟の告白。
中間試験が終わっていくらか日にちが経った頃。机の引き出しに忍ばせた呼び出しの紙切れ、応じてもらえるとすら思っていなかった。
ぎゅっと瞑った目、むしろ謝っているかのように勢いよく下げた頭。
それは、一人緊張して待っていた屋上に彼が姿を現して、約二十秒後。それまでの無言は、あたしの思考が完全に止まっていた時間。
曲げきった背中を伸ばすことなく、返事を待つ。
「…いいけど」
頭上から降ってきた声は、空耳かと思われた。予想だにしていなかった。
「玉砕覚悟の告白」…覚悟なんて甘く、振られることは確信していたわけで。
ただ、伝えてみたい。そんな挑戦心を胸に、口にした言葉だったから。
「あの、もう一度……」
「言わねぇよ」
顔を上げれば、不機嫌を絵に描いたような表情。
―――ある初夏の日の放課後。
あたし及川 一香(オイカワ イチカ)、本日氷室 恭一(ヒムロ キョウイチ)の彼女になりました。
人生一大決心。玉砕覚悟の告白。
中間試験が終わっていくらか日にちが経った頃。机の引き出しに忍ばせた呼び出しの紙切れ、応じてもらえるとすら思っていなかった。
ぎゅっと瞑った目、むしろ謝っているかのように勢いよく下げた頭。
それは、一人緊張して待っていた屋上に彼が姿を現して、約二十秒後。それまでの無言は、あたしの思考が完全に止まっていた時間。
曲げきった背中を伸ばすことなく、返事を待つ。
「…いいけど」
頭上から降ってきた声は、空耳かと思われた。予想だにしていなかった。
「玉砕覚悟の告白」…覚悟なんて甘く、振られることは確信していたわけで。
ただ、伝えてみたい。そんな挑戦心を胸に、口にした言葉だったから。
「あの、もう一度……」
「言わねぇよ」
顔を上げれば、不機嫌を絵に描いたような表情。
―――ある初夏の日の放課後。
あたし及川 一香(オイカワ イチカ)、本日氷室 恭一(ヒムロ キョウイチ)の彼女になりました。