そんな私を見上げて、恐怖と驚きの入り
混じった青い顔をしている侍女達。

どうしたんだろう?私、何か変なことを
言ったかしら?

「クククッ…あっははは!!」

その途端、突然信長様が笑いだした。そ
れにまたもや驚愕の表情を浮かべる侍女
達。

どうやらこれもまた珍しい事のようだ。

「凛、そなたはほんに面白い。呼んだか
いがあったと言うものよ!」

そしてまた笑いだした。

まったくこの状況についていけていない
私は、ただオロオロしていた。

「まあ、良い。そなたに免じて、今回のこ
とは不問に処そう。

さあ、こっちへ来て酌をしないか。」

そう言われては、しない訳にもいかず、
私は戸惑いながらも立ち上がり、信長様
のところへ向かった。私は気持ち間をあ
けて跪き、酌をしようとお酒の入った瓶
に手を伸ばした。だが、その手は瓶に触
れることなく、何か堅いが温かいものに
手を添えていた。

そしてそれが何かに気付いた私は瞬時に
赤面した。

どうやら信長様が私の袖を引っ張ったの
で、私は均衡を崩し、顔と手を信長様の
胸に埋める姿勢になってしまった様だ。

私の周りには異性と言えばお父さんと年
の離れた弟ぐらいで、もちろんこのよう
に男性に抱擁をされるような事も今まで
無かった訳で。

そんな私の様子を見た信長様はとても意
地悪で、

「クククッ。純潔だな?どうやら周りには
大した奴はいなかった様だからな。」

と、耳元で囁いた。

私はそれを聞いて腰が砕けそうになるの
を気力で必死に堪えた。そんな初めての
感覚に私はまたもや戸惑う。