衣擦れの音がやけに響く。それほどに静
かだった。私は着替えと身支度を終え、
今信長様のいらっしゃる奥の間へと案内
されていた。

そして何故か廊下ですれ違う者全員が私
を見ては溜息をつくので、少々困惑した。

私、何か変かしら?

そう首を捻り、もう何度目かになるが、
自分の事を眺めてみた。

そんな私を見て、今度は案内をしてくれ
ている歳かさの侍女が溜息。

「何を落ち着かな気にしているのじゃ。」

「も、申し訳ありません。

何故か廊下で会う皆さんが私を見て溜息
を吐くので、どこがおかしいのかとさっ
きから気になっていて考えていたんです
が、一向に分からなくて…」

「そなた、本当に分からんのか?

嫌味でなく?」

「嫌味とはどういう意味でしょう?

私、何かお気に障る様なこと言いました
か?すみません。」

肩を落として、本気で謝る私を見て、本
当に分からないのだと悟った侍女達に、
私はまた揃って溜息を吐かれてしまった。

そして結局何だったのかは教えて貰えず
奥の間に着いてしまった。

そして私はさっきまでのくよくよした気
持ちはどこかに行ってしまい、また着た
ばかりの時と同じように緊張してきていた。