私は今日もイチョウの木の下にいた。
「奈央〜!試験終わったぁ〜」
向こうから遼平が自転車で叫びながらやって来た。
自転車を倒し私の横へ座った
「お疲れ様。試験どうだった?」
「う〜ん…分かんねぇ。でもやれるだけの事はした」
遼平がいきいきとして見えた
「なぁ…奈央…」
突然遼平がまじめな顔して私の方に振り向いた
「な、なぁに?突然」
「実は俺な…」
「な、何?」
「奈央に隠している事があるんや」
「…………」
私の心臓はドキドキ動き出した
「隠し事って何?」
私は恐る恐る聞いた
遼平はしばらく黙ったままだった…
「何?気になるよ、教えて」
「怒らんで聞いてくれるか?」
「怒るような事なの?」
「…………」
「とにかく話して!」
「実はな…今まで用事があるって言ってたんは塾と図書館にかよってたんや」
「…………」
「もちろん大学に進学する為にな」
「どうしてそれを隠す必要があるの?」
「今まで何の目標もなくただサボリに学校行ってたから恥ずかしくて言えんかったんや」
「俺な…成真附属の医学部受けたんや」
「えぇー!医学部?」
「ああ…」
「遼平くんの目標ってお医者様になる事だったの!?」
「俺な、形成外科医になりたいんや」
「形成外科医?」
「ああ…」
私はイマイチ形成外科医の意味が分からなかった。
遼平は続けた
「形成外科医ってな手術の傷跡とか綺麗にするのが仕事やねん」
「それって…」
「奈央は傷跡が残るのが嫌だと言ってたよな…」
「うん…」
「俺が治してやる。奈央の悩みは俺の悩みや…そう思ったんや」
「私の…ため?」
「……………」
「遼平くん?」
「お前の傷跡俺がキレイに治してやる!」
「…………」
「やっぱり気分悪くさせたかな?俺…」
「そのために猛勉強したの?」
「俺じゃダメか?俺じゃイヤか?」
「……………」
「そうだよな…俺勝手に…ん?奈央?どうした?」
私は目から涙がこぼれていた
「わりぃ。変な事言って。逆に傷つけちゃったな…」
「違うの」
「…………」
私は涙が止まらなかった
私は走ってその場を後にした
遼平の言葉、気持ちはすごくすごく嬉しかった…
でも…
遼平にだけはこの醜い傷跡を見られたくないと思う自分もいた…