授業なんてそっちのけ
今朝遼平が「奈央」って呼んでくれた事を何度も思い出し1人ニヤニヤしていた…
(あー放課後早くこないかな)
2人が付き合い出したのは初夏の季節だった…
放課後…
私は待ちきれなくて隣りのクラスを覗いた。
(あっ!遼平くんだ!)
私の存在に気付いた遼平が手を挙げた
いそいそと片付けてこっちへ来た。
「待った?」
「ううん…全然!」
あ〜これが恋人同士の会話だ…
1人舞い上がっていた
私たちは毎日朝と帰りは一緒だった。
「あち〜な〜。もうすぐ夏が来るな」
「私、暑いの苦手」
「俺も…」
「ねっ?自転車乗せて?」
私は自転車の後ろに腰掛けた。
自転車は走り出した
「あ〜涼しい♪」
「俺はあち〜けどな」
遼平がボソッと言った
「じゃあ、放課後ね」
遼平と別れて教室へ入ったらあみが雑誌を広げていた。
「おはよう、奈央」
「おはよう…何見てるの?」
「水着だってよ。何着ても一緒だっつうの」
竜也が口を挟んだ
「奈央も見る?」
「私…見たくない」
冷たく言い放った…
あみと竜也は海へ行くつもりのようだった。
(いいなぁ…あみは…。水着着れるんだもん。私なんて…)
自分の醜い姿を思い出した。
(私、あみに八つ当たりしちゃった…性格まで醜いなんて…)
帰り道…
「どうしたんだよ…元気ねぇな」
「うん…」
「何かあった?」
「……………」
「そう言えば竜也たち海行くんだってな」
「……………」
「俺たちも…」
「もうその話やめて!」
「どうしたんだよ?」
「みんな何も分かってない!そんなに海行きたけりゃ竜也くんたちと行けばいいよ!」
「俺、一言も海に行きてぇなんて言ってねぇぞ」
「言ってないけど行きたいんでしょ!」
「何があったか知らねぇけど八つ当たりはやめろよ!」
「もういい!」
私は遼平を残しスタスタと先に帰った…
「もう、イヤだ…私、最低…」
あみだけでなく遼平にまでも八つ当たりしてしまった事を悔やんでいた…
明日遼平に逢うの気まずいなぁ…
次の日の朝、遼平はいつも通りに迎えに来ていた
「おっす!機嫌直ったか?」
「おはよう…昨日はごめん…」
「俺、奈央が何で怒ってたか分かったよ」
「…………」
「アイツらは海へ行けばいい。俺たちは水族館に行こう?」
「……水族館?」
「ああ。見てるだけでも涼しいぞ〜。初デートだ!」