「アイツさぁ…急に遅刻もサボリもなくなって、放課後も一目散に帰るからてっきりお見舞いにでも行ってるとばかり思ってたんだ…」

「奈央ちゃん、遼平…全く来てないの?」

「……最初の頃1回だけ…それっきり。あっ!でも訳あって来れないとは言ってた。何か目標がどうとか…」
「あみ、お前遼平から何か聞いた?」

「ううん…竜也が知らなきゃ私は知らないよ」

そっか…この2人も知らないんだ…

不安は募るばかりだった…
「園原さん?渡辺先生と面談です。診察室まで来てもらえますか?」

急にナースコールが鳴った

「あっ、はい!すぐ行きます」


私は病室を後にした…
「うん、随分良くなった。不整脈も余り出てないな…もう少しだ」

「……………」

「園原さん?どうかしましたか?」

私は小さく口を開いた…
「先生?この傷跡はどの位で消えますか?」

私の頑張った手術の跡は醜い姿だった…

「うーん…そうだね…」

「先生、はっきり言って下さい。一生消えないんでしょう?そうでしょ?」
「年とともに目立たなくはなるけど消える事はないなぁ…。」

「そうですよね…」

「大丈夫!その傷跡は園原さんが頑張った証拠の名誉の傷跡だから…ね?」



分かっていた…
でも止まらなかった

「先生、私これからなんです!ビキニだって着たいし…」
まくしたてる私に先生が割って入ってきた

「園原さん、あなたは手術をして回復に向かっています。手術をしなければこうやって先生と言い合いする事さえ出来なかったんですよ。」
「えっ?どう言う事ですか?」

「ご両親には話してありましたがあなたは手術をしなければあと一年しか生きられなかったんですよ…」



聞いてなかった…知らなかった……
私は病室のベッドへ戻り複雑な気持ちで横になった。

(手術をしなければあと半年…)

先生の言った言葉が頭の中でリフレインしていた。

私はパジャマの上から傷を撫でた

傷跡はでこぼこしていた…