お母さんと間違っているのかなと思ったけど、言葉に甘えて扉を開ける。


 宮野君は私を見ると驚いた様子もなく、「座れば?」とだけ言っていた。


 私が着たことに驚いてないみたいだった。


「驚かないの?」


「声が聞こえたから。ののかもね」


 耳がいいのか、私達の声が大きかったのか。


 彼の隣に座ると、ののかちゃんと一緒に戻ってきたことを伝え、勉強の続きをすることにした。


 彼はさほど驚いた様子も、戸惑った様子もなく「そうなんだ」と言っていた。


 真面目な顔をして、教えてくれる彼の横顔を見ていながら、彼の本心が分からなかった。


 ののかちゃんの言っていたように登下校だけじゃない。休みを割いて勉強を教えるなんて、彼にとっては何のメリットもないはずなのに。


どうしてそこまでしてくれるんだろう。それが勉強なんて煩わしいものであることは置いておいて。


 特別、か。


 ののかちゃんの言っていた言葉を思い出していた。