だが、彼女はそんな言葉を一言も漏らさない。


「少しだけご一緒してもいいですか?」


 私はののかちゃんと公園の中に入ることにした。中では親子連れが遊んでいる。そんな家族を見て、ののかちゃんは幸せそうに笑っていた。


 その足で、奥にあるベンチに腰をおろす。背後は大通りに面しており、網越しに車が走っている。


 彼女は座るときもどかっと座るわけじゃなく、スカートの裾を押さえ、ゆっくりと座る。


 その大きな目が私を見た。



「でも、渉ったら何も教えてくれないからびっくりしましたよ。武井先輩とつきあっているって」


 そういえば、彼の友達は知っていたのに、ののかちゃんは知らなかった。


 振りだから? 言う必要がなかったから?


 宮野君にとって私の存在を教えたいのは、断るのが厄介な相手。


 逆を正せばそうでない相手には私とのことは言わないほうがいい。