「これが海なの?」
満と尚と合流してしばらくしてから来たのは、
桐が連れてきたいと言ってたあの海らしい。
「そうだよ。」
にっこり微笑む湊は、私の荷物まで持ってくれて
なんだかすごく悪い気がする。
「陣取りしねぇーとやべぇな。」
桐が周りを見渡している。
海ってのは人が多いらしい。
「鈴ちゃんとついて来いよ。」
「うん。」
迷子になったら大変らしい。
トボトボ彼らの後ろを金魚のふんごとく
ついてく。
肌がジリジリ焼ける。
熱くて日を避けようと思って、
近くのパラソルにお邪魔した。
「どうしたのお嬢ちゃん?」
優しそうなおじさんとおばさんが
ビックリしたように聞いてきた。
「すいません。日が暑くてつい
入ってしまいました。お邪魔しました。」
「いいんだよ。ちょっと、休んでお行き。」
おばさんがにっこり笑うと、お茶をコップに
淹れて差し出してくれた。
「お構いなく。」
「あなたのお名前は?」
「鈴といいます。」
「礼儀のいい子だね。
学生さんかい?」
「はい。」
「それじゃあ、あれかい。
夏休みなのかい?」
「はい。」
のほほんとした気分でおじさんと
おばさんと少し談笑してから、
気付いた。
「あっ、すいません。
行かないといけなくて、
あの、ありがとうございました。」
お辞儀をしてその場から離れた。