「たぶんね、鈴を必要に思っているのは

俺なのかもしれない。」

小さな湊の声に胸がぎゅっとなった。

湊に抱きしめられて湊の匂いがする。

湊の声が近くてきゅんとなる。

「・・・湊?」

「傍に居て欲しいのは鈴だけじゃないからね?」

優しい声が落ち着いた心に染み渡り、

知らないうちに湊を不安にさせてしまったことに

後悔をした。

「・・・ごめんね。」

「いいよ。でも、鈴の方が心配だったから。」

湊の腕が緩くなり湊から少しずつ離れていく。

「ちょっと最近可笑しいね。

何考えてるんだろう。もうすぐで夏休みなのに。」

この休みが終わったら少し勉強をして、テスト

が終わって夏休み。

もう時間はとっくに流れている。

湊と出会ったあの日から私はどれだけ、

自分の心と戦ってきたんだろう。

涙を流さないと決めたあの日から、

もうどれぐらい経っているんだろう?

見えないのに心のどこかにある気持ちは

よく分からないうちに現れる。

狭いようで広い世界はちっぽけな私には

大きすぎて隠れてしまえる。

どこに行っても何をしててもやっぱり

自分の心に嘘をつくのは辛いものなのだ。

今ここから消えてしまえる。

でも、そんなことをしたら湊はどう思う

だろう?

怒る?悲しんでくれる?それとも何も

思わないんだろうか?

ここから居なくなることはすごく

簡単なことなんだ。

だから、時々思う。

ここに居ることは湊の自由を奪っているのでは

ないだろうか?