「桐の言ってることわかるよ。
前も言われたことある。でも、桐の言葉のようには
わかってなかった。今思うと、その人の思いを
知らずに私は自分を否定し続けたんだね。」
悲しさがより一層強くなった。
大事に思ってくれる人を今まで
私はきっと知らずに生きてきた。
自分の言葉の足りなさもすごく
嫌だった。でも、何よりも自分のことを
思ってくれる人の思いをちゃんと受け止め
ることが出来なかったんだ。
自分の弱さに落ち込む。
「鈴。その人がどう思っているかはわからない
けど、心から鈴を心配している人は、きっと
鈴のことをよく分かっているんだと思うよ。
自分の思いが伝わらなくてもきっとわかって
くれる時がくるって信じてるんじゃないかな?」
湊はいつも優しい言葉で私のマイナス思考を
宥めるように自分のことのように考えてくれる。
私の欲しい言葉を言って欲しいときに言って
必ず傍にいて教えてくれる。
湊の考え方も全部が私を否定することは
なく、必ず間違っていることは違うんだって
教えて正しい道を一緒に見つけてくれる。
「そうだといいな。
きっと、その人は私のこと嫌いだから。」
自分でも思うほど冷たい声が出た。
心もクールダウンして闇の中を彷徨う。
その言葉を聞いて湊の表情は暗くなり
みんなも話さない。
「・・鈴。」
その声がいつも私を落ち着かせてくれる。
でも、今はただ悲しくて仕方なかった。
その声は私の知っている人に似ている。
忘れられないあの人。
でも、重ねているわけではない。
湊っていう人間が私は好きだから。
あの人もまた違うんだってわかっているから。
だから、声を聞くだけ悲しくて
話してしまいたくなる。
全てを君に伝えたくなる。
でも、出来ない。
私にはまだそんな強さを持ってないから。
私にはまだ言えるほど傷は癒えてない。