長い間このままのような気がする。
でも、それでは駄目だって気づいている。
それじゃ、湊を一人ぼっちの公園に残す
ことになる。そう思ったときには、もう
体は動いていた。さっきまでは、鉛のように
動かなくて意気地なしの自分。
今は、やっぱり湊に切なくなるほど、
傍に居たかった。
「・・・湊。」
そう言って湊を抱きしめた。
ベンチに座っている湊は、何も言わない。
「湊。湊、湊湊。」
「・・・・・・・」
「ごめんね。湊。」
「・・・・・・・」
「湊のこと知りたいって先走って、
湊が嫌なこと思い出させちゃった?」
「・・・・・・・・」
「私がもっとバカじゃなかったら、
こんな風に湊に辛い思いさせなくて
すんだのにごめんね。」
「・・・・・・・・」
「嫌いになってもいいよ。
捨てちゃってもいいよ。私、湊の
傍にいる資格ないね。」
「・・・鈴。」
茶髪の湊の髪からは湊の匂いがした。
シトラスのさわやかな匂い。
抱きしめている手が震える。
自分で言ってるけど、ホントに嫌われたら
と思うと苦しくなる。
鈴と呼んだ声があまりにも弱弱しく聞えた。
「湊。」
「鈴、ごめん。」
そう言った湊はいつもより小さく見えた。