「…ありがと……」
……な、なんか…怖かったよぉ…
目の前にカチャリとカップが置かれる音を上の空で聞きながら、視線は去って行く見慣れた背中を追っていた。
そんなあたしを、どうしたの?と不思議そうに優しい笑顔で覗き込むルイ君。
「えっ…あっ…ミルクティー、だね…」
「ふっ… そんなに怜二が好き?」
「はへっ??」
「すごい切なそうに見てたよ?」
「そ、そうかな……?ははは…」
ダメ、ダメ。
いつもみたいに何気なく見なくっちゃ……
凌ちゃんとの約束を思い出して慌てて視線をそらすけど、どうしても意識は怜二の方へと飛んでしまう。
今のって、ヤキモチ妬いてくれたのかな……?
いやいや、本気で呆れてたのかも……?
あんな怖い顔、初めて見たし……
………でも、あたし、手袋はめたままだったんだけどな……
膝に置いた手袋を着けたままの手をぼんやり見ながら、あたしは知らぬ間にため息をこぼしてたみたいで。
「あ〜あ… また逃げちゃった……」
横から聞こえた言葉にキョトンと顔を上げると、どこか困ったような顔をしたルイ君と目が合った。
「逃げた……?」
「そ、幸せが乙葉ちゃんの口から……」
ああ、そういうことね。
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