ん―-……





この店で、一度なりとも乙葉が本性を曝すなんてしたことあったか……?





ひとしきり眉をしかめて思い出してみる。






こう言っちゃなんだけど、アイツはそういう部分を隠すのはかなり上手いと思う。





この俺でさえ、疑問こそ抱いていたものの、半分は騙されてたしな……






あるとするならば、たまにルイと2人でコソコソ話してる時、か……





ムカ、ムカムカムカ……





カウンターの隅で、時折頭を寄せ合って話している2人を思い浮かべて、またもや無性に腹が立ってくる。





………って、ダメだ、ダメ。
こんなのただの鬱陶しいヤキモチ野郎だ。




俺はそんなキャラじゃねぇ……
この件は忘れよう。





しばらく目を瞑って無心を取り戻す。





……ムカ…ムカムカムカ…





くっそ!
よくわかんねぇけど、余計に胸の中がモヤモヤする。




こうなったら、直接乙葉に今度確かめてみよう。





そうだ、そうだ、そうしよう。





とりあえず、あと2時間仕事しねぇと……






俺はまだ顎に垂れていた雫を拭って、何とか作り笑いを浮かべながらホールに戻った。







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