その言葉を聞いてすぐにピンときたけど、なんと言えばいいのかわからず、あたしは俯いて考え込んでしまった。






凌ちゃんは、きっとその頃からママのことを好きなんだと思う。





そして12年前にパパを亡くしたママも今では……






でも2人は、決してそういう素振りを周りに見せない。





それはパパへの義理立てなのか、娘のあたしに対する遠慮なのかはわからない。





だけど、あたしはずっと2人が結婚しちゃえばいいのにって思ってきた。





何度かママには、誰とは言わず、再婚しないの?とだけ聞いたことがある。





その度に、




『ママは今の生活がとても大事でとても幸せなの。
乙葉は違うの?』





幸せそうに微笑みながらそう切り返されて、それ以上言わせてもらえなかった。





「……ねぇ、凌ちゃん…」




ママと結婚しないの?





顔を上げてそう言おうとした途端、凌ちゃんはあたしの気持ちを汲んだのか、静かに首を振った。





「俺の中では、今でも杏奈は大事な親友の嫁さんなんだよ……」





そう言って、ママと同じように優しい瞳であたしの頭を撫でる凌ちゃん。





やっぱりあたしは、凌ちゃんにさえ先を言わせてもらえないんだね……





でも、でも、いつかは……





そう思ってしまうのは、あたしのエゴなのかな?





天国のパパはどう思う……?






心から安心できる大きな手で頭を撫でられながら、あたしはまた黙って俯いた。






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