呉林 正男−−−





実はそれが、あたしのパパの本名だったりする。





つまり、柾っていうのは源氏名ってやつで。





ちなみにママの名前である杏奈も源氏名。





本名は昭子だったり……





でも2人はなぜか本名を嫌って、頑なにプライベートでも柾と杏奈で通し続けた。





まあ、似た者同士って感じ?





ああそうそう、パパの墓碑だってもちろん“MASAKI.K”だしね。





改めてその名で言われると、不謹慎だとは思うけど、あたしまで思わず笑いが込み上げてきてしまった。





「くくくっ……それで、どうしてパパは病院に……?」



「過労だよ。街中で倒れたらしい。
あの頃はホストの12時間労働とか、ざらだったからな……」





凌ちゃんの話によると、ひと昔前まで、日付が変わるまで普通のホステスが居るクラブで、その後にホストクラブに営業が変わる店がいっぱいあったんだとか。





凌ちゃんとパパが勤めていた店も同じで、午前0時にオープン、それから全部の客が帰るまでが営業時間だったんだって。





だから仕事が終わってみれば昼の12時だった、なんてよくあったことらしい。



すごい重労働。







「その電話を受けた時に、俺たまたま杏奈と一緒に居てさ、話がつつぬけだったみたいで……」





そこまで一気に話した凌ちゃんは、わずかに自嘲的な笑みを浮かべてぽつりと呟いた。





「あの電話がなかったらって、今だに思ってしまう俺は、かなり小さい男だよな……」






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