ガチャ−−−
玄関の開く音を聞いて、帰ってきた人物を急いで迎えに行った。
「おかえり〜」
「うわっ… た、だいま……?
どうした?玄関まで来て……」
満面の笑顔で立つあたしを不思議そうに見ながら、凌ちゃんは脱いだ靴を綺麗に揃えている。
「ねぇ、今日のご飯はな〜に?」
「そんなに腹減ってんのか?今日はな…」
「違うってば!あたしにも手伝わさせてもらおうと思って」
あたしがそう言うと、凌ちゃんは持ってたエコバッグをぼとりと落として目を真ん丸にした。
「……な、な、なんだって…?」
「だから〜、あたしも作るの手伝う…」
「乙葉っ!!熱、ぶり返したのかっ!?」
即座に心底心配そうな顔した凌ちゃんの手が、あたしの額に伸びてくる。
外から帰ってきたばかりの凌ちゃんの手はひんやりしていて、暖房で火照った顔にちょうど心地良かった。
………って、
違うわ〜〜〜いっ!!
おでこにぴったり張り付いてる手を払いつつ、
「もう元気だってば!
じゃなくて、あたしに料理を教えて欲しいの!」
心外だと言わんばかりにあたしが眉をひそめると、
「あれ……?俺、耳おかしくなった……?」
今度は真顔で自分の聴力を疑いだした凌ちゃん。
こらこらこらっ!!
そんなにあたしが料理すんのがおかしいのか〜〜!!!
「俺も年取ったしなぁ……」
「で、今日はなにっ!」
あくまでも空耳扱いする凌ちゃんにムカムカしながら落ちてるエコバッグに手を伸ばす。
すると頭上から、ヒッ!と短い悲鳴が上がった。
「………マジ、で…?」
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