あああ……言っちゃった……
とうとう『辞めて』って言っちゃった……
今まで言いたくてもこの性格が邪魔して言えなかったワガママ、とうとう言っちゃったよぉ……
例え一緒に帰るのを断られても、ご飯食べるのを拒否られても、絶対に言わなかったワガママなのに。
呆れられてたらどうしよう?
イヤ面されてたらどうしよう?
怖くて目が開けられない……
でも、でも。
今、キスしてくれたよね?
『ありがとな』って言ってくれたよね?
怜二の反応が怖くてぎゅっと目を閉じたままのあたしの頬を、温かい指がそっとなぞっていく。
「……っ…」
「そんなに、あの店、イヤか……?」
思わず開けてしまった目に映ったのは、心配そうで、それでいて優しい瞳をたたえた怜二の顔だった。
気づかぬうちに、あたしは泣いてしまったらしい。
涙越しに見る怜二の顔は、窓から差し込む陽の光で、さらにキラキラ輝いて見えた。
「………イヤ…です…」
そんな綺麗な顔で、あんまり見つめないで欲しいんですけど……
絶対、あたし、不細工な顔してるし。
恥ずかしくて目を伏せたあたしの顎を、クイッと持ち上げる怜二の長い指。
「俺は、ホストにはならない……」
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