あたしがその噂を耳にしたのは、お昼休みのトイレでだった。
「昨日も怜二に会いにラリック行ってきたんだけどさ、ちょっとおいしい話聞いちゃったんだよね」
個室から出ようとしてふいに聞こえてきた会話に、あたしは開けかけていたカギを再び閉めた。
ラリックの怜二って……どう考えても怜二のことだよね……?
基本、ラリックの客層は20代・30代だけど、たまにあたしと同年代くらいの子も居る。
だからこの学校にも常連客が居たって不思議じゃないんだけど……
直接耳にするのは初めてだった。
しかも怜二の話題だなんて。
おいしい話って……
まさかこの学校の生徒だって気付いた……とか?
あたしの喉がゴクリと鳴った。
「何よ、教えてよぉ」
「ふふふっ、聞きたい?」
「聞きたい、聞きたい」
「しょうがないなぁ…、ここだけの話にしといてよ?」
嬉しそうに勿体振る口調が、さらにあたしの緊張を煽る。
ドキドキ……
やだやだ、怜二はあたしの彼氏なんだから…!
昨日、初めて一緒に帰った時の怜二の顔が浮かんで、あたしは目をぎゅっと閉じた。
「今度、店のクリスマス・イベントで怜二達、ホストするらしいよ……」
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