朝からポケットの中のケータイがブルブルうるさい。
というより、切れてはまたかけ直す、を誰かがやってるらしい。
こういうことをすんのは………
俺は一度チャリから降りて、ピッチピチの制服のズボンからケータイをとり出した。
ピッチピチ……そう、俺の制服、サイズがまったく合ってない。
だからポケットにもあまり余裕がない。
だからって、家が貧乏で新しい制服が買えなかったというわけではない。
ってか、俺が自分で選んで買ったヤツだし。
わざと、ワンランク小さめを買ったズボンは、裾ももちろん宙ぶらりん。
くるぶしが見えるか見えないか、ぎりぎりのライン。
周りから見たら、相当ダサい奴に見えることだろう。
俺自身も、ちょっとやりすぎた感があるぐらい。
ブルルルル ブルルルル
再び震えだしたケータイを覗くと、案の定、“乙葉”の文字が浮かび上がっている。
あと5分もあれば俺は学校に着く。
昨日まで休みだった乙葉も、今日から復活ってメールが着てたから、きっともう学校に到着している頃だろう。
このまま無視して学校で話を聞くか、それとも、今電話に出るか。
振動するケータイをまじまじと見つめる俺の横を、
『うわっ……アイツ、ケータイの使い方わかってないんじゃないの?
ダサ〜い……』
なんて、なんとも失礼なことを言いながら、大根足の女が2人、クスクス笑って通り過ぎて行った。
コラ待てっ!ブサイク!!
と、文句のひとつでも言ってやりたいところだけど、ここは我慢。
だって説得力ねぇし。
俺自身が今“キモダサ野郎”状態だしよ。
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