―――大丈夫だから。僕のことだけ考えてやってごらん。


慶太の澄んだ瞳は、私にそう語りかけているように見えた。


そうだね、慶太。慶太へのプレゼントだもん。

競うことないんだね。


出来上がりよりも、それに込めた気持ちのほうが大事なんだ。
どうしてそんな事を忘れていたんだろう。

慶太の事だけ考えていれば、それでいいんだ。




私はもう一度深呼吸して、再びペダルを踏んだ。

もうすっかり手の震えも、出かけていた涙も引っ込んでいた。


また、私、慶太に助けられたね。

ありがとう。

その気持ちを込めて少しづつ針を進める。


気付くと、自分でも驚くほど綺麗な縫い目でコートの脇の部分が繋がっていた。