私は、さっきまでの幸せな気持ちとは反対の重い気持ちでミシンの前に座った。

「さぁ、凛ちゃんも頑張りましょうね。」

有紀さんの優しさにも、小さく頷くしか出来なかった。

家庭科の授業で習ったミシンの使い方を思い出しながら、生地を置いて押さえをおろす。

針を落として、ゆっくりペダルを踏む。
モーターがブーンと低い音をたてて回りだす。

仮縫いした縫い目からずれないように、それだけを考えて生地を送る。

亜由美よりいいもの作らなきゃ。

綺麗に縫わなきゃ。


そう思えば思うほど、手が震えてうまくいかない。

私はふいに、泣きたくなった。

でもここで泣いちゃだめだ。


一度ペダルから足を離して、深呼吸をする。



と、その時慶太と目が合った。