ナンパ?………じゃないよね。

亜由美と似た雰囲気の男の子。


二人は何やらもめている様子だった。

私は割って入っていいものか分からずにただ傍観していた。

すると、男の子は何かを言い捨ててその場を離れた。

亜由美は道端に捨てるように置いた荷物を拾い始める。

私は慌てて駆け寄ってそれを手伝った。

「どうしたの?大丈夫?」

「あぁ…見てたの?大丈夫大丈夫っ!」

亜由美は私から荷物を受け取りながらいつもの明るい声で言った。

でも、その声は弱々しくて、少し震えているようにも聞こえた。

「今の人、知り合い?」

「アイツ?元カレっ!それだけだよ。…さっ!早く帰ろ!」

亜由美はグイッと荷物を持ち直す。

「う…うん。」

私は、どんどん先に行く亜由美の背中に向かって

「ソワレ、寄ってく?」

と声を掛けた。

「んー。今日はいいや。」

亜由美がソワレに行かないと言ったのはこれが初めてだった。