「ちょっとー!いつまでそうしてんのぉ!」

私は、亜由美の声にふと我に帰る。

「あ……ごめんなさい。」
「もー!独り占めはダメなんだよ!」

亜由美はそう言って頬を膨らませた。

「てか、有紀さんが、クッキー出来たから食べようってさぁ。ほら!行くよ、凛!」

私は耳を疑った。

亜由美は私の名前、ちゃんと聞いてて覚えててくれたんだね。

慶太の手を放すのは惜しかったけど、私は笑顔で亜由美の後を追った。

そして、カウンターの角でクッキーを皿に盛っていた有紀さんに

「私にもでした!私にも普通の男の子でした!」

と、早口で告げた。

有紀さんの笑顔は今までで一番嬉しそうで、私まで嬉しくなった。