有紀さんは、亜由美に何やら話かけてから、私をカウンターの奥へ案内してくれた。

客として来たのに、仕事場に入るのは少し悪い事をしてる気分だったけれど、これも‘秘密の空間’みたいでワクワクした。

カウンターの中は、人がすれ違うには体をよじらなければいけないくらい狭かったけれど、よく片付いてスッキリした印象だった。

そして、壁に備え付けられた大きな棚の横に少し奥まったスペースがあり、そこに亜由美がしゃがみ込んでいる。


有紀さんはカウンターにもたれかかる様にして、私が前に行けるように道を開けてくれた。

邪魔をしてしまったし、亜由美に邪険に扱われてしまうだろうなぁと緊張したけれど、意外な事に亜由美は私の姿を見るとニッコリ微笑んだ。