気付けば、もう窓の外の世界は夕焼けで赤く染まっていた。
「あ……ボタン付けできてないや。」
私が、慌てて紙袋を探ろうとすると、
「凛ちゃん。」
有紀さんが、私の手を制した。
その有紀さんの手が、あまりに冷たくて思わず顔を上げる。
「今日は、ケーキの仕込みをしたいから早めにここを閉めようと思うの。
だから、申し訳ないんだけど、残りはお家でやってもらっていいかしら?」
「あ!ゴメンなさい。なんか、一日中のんびりしちゃって……」
私は、出しかけたものを紙袋に押し込んだ。
「こちらこそ、ごめんなさいね。でも、とびっきりのケーキを焼くから楽しみにしていてね。」
有紀さんは、ニッコリ笑った。
私も笑顔を返すと、亜由美と優奈と一緒に店を出ることにした。