「此方になります」
白井は、その扉を指し示す。
「あ、ちょっと待った!」
不意に思いついて、扉を開けるのを止める。
そして、鞄の中から指紋照合キッドを出す。
粉をふって、指紋を写し取る。
これで、よし。
「あ、どうぞ」
呆気にとられている彼らに、促すと白井は、慌てて扉を開く。
――しかし、そこには誰も居なかった。
古屋氏の死体すらも無かった。
「えっ?一体どういうこと?」
「やっぱり、ゲームだろ」
「だ、騙したんですか」
山田、石崎、中島はそれぞれ白井に詰め寄る。
しかし、当の本人は訳が分からないという表情だ。