あの子の笑顔はすぐに出てくるのに、名前だけが思い出せない。
「夜深ちゃん…、今日帰るんだろう?だったら泣かないで、おばあちゃんに笑顔を見せて欲しいな…」
「…っ……」
私はゴシゴシと顔をこすって涙を拭い、おばあちゃんに笑顔を向けた。
「そう。ほら、かわいい夜深ちゃんだ。」
「ふふふっ……おばあちゃん…」
「何だい?」
「また……来てもいい?」
「もちろんだよ。ここは夜深ちゃんの家だからね。」
「…ありがとう」
「さぁ…帰ろうか…」
おばあちゃんが言った。
私は何も言わずに頷いて、おばあちゃんの隣を歩いた。