私とおばあちゃんは家の周りの道をゆっくりと散歩した。
おばあちゃんと過ごす時間は、両親がいなかった時間を埋めてくれるようで、心地よかった。
しばらく歩いて、そろそろ家にも着く頃に
一本の木が現れた。
大きいとも小さいとも言えない、いたって普通の木。
でもなぜだか私は、その木の前で立ち止まってしまった。
なんだか……
とても懐かしい気がして。
「どうしたの。夜深ちゃん。この木が何かしたかい?」
「……私…この木、知ってるかもしれない… おばあちゃん、これ、何て言う木?」
私はただただ、目の前の木をじっと眺めながらおばあちゃんにそう訊ねた。
「……夜深ちゃん。知ってるも何も、夜深ちゃんはこの木に咲く花が大好きだったんだよ。」
「え?」
「昨日話してた男の子と、この木下でよく歌を歌ってたっけねぇ…」
「……」
ああ…
思い出せない。