夜になって、私は温かい格好をして唯人君を待った。




電気を付けなくても部屋を月が照らしてくれている。




ピンポーンーー



呼び鈴が鳴ったので私は月を見るのを止めて、急いで玄関に向かった。



ドアを開けて、目の前に立っている人を見上げる。




「こんばんは、お姫様。お迎えにあがりました。」



唯人君は少し微笑んで私にお辞儀をした。



「ふふふ。お姫様なんて柄じゃないよ。私。」



「俺にとってはお姫様なの。ほら、行くぞ!」




唯人君は私の手を取ると、走ってマンションの階段を駆け下りた。




「唯人君!!もっとゆっくり行こうよ!!」




「ダメ!もうちょっと走って!!あとちょっと!」




どこへ行こうとしているのか唯人君はグイグイと私を引っ張る。




「唯人君!どこ行くの?」



「まだ内緒!」



「……も…疲れたよ…」


「ごめん!でも、すぐそこだから。」




唯人君は息を切らしながらチラリと私を見て言った。