部屋の前に着くと、唯人君はもう一度
ギュッと私を抱きしめてくれた。
「……唯人君…」
「…どこも行かない?」
「…行かないよ…」
「本当に?」
「本当だよ。」
突然、唯人君が弱くなった。
顔……見えないよ…
「本当は……ずっとそばにいたいんだ。でも、夜深はそうもいかないから…」
唯人君はそう言うと私を抱きしめる力を弱めた。
「…約束するよ。どこにも行かない。絶対。」
「うん。夜深を信じなきゃな。ごめん…」
「ううん。嬉しかった。」
私はそれだけ言うと唯人君を真っ直ぐ見つめた。
「…あー…そんな顔で見るなよぉ…帰したくなくなるから。ほら、もう部屋入れ。俺は夜深が部屋に入って鍵をかけるまでここにいるから。」
「あはは。うん。お休み。」
「お休み。」
私は一度、唯人君に微笑んでから部屋に入った。