思っていたよりも簡単にその言葉が出てきた。




『…夜深?何言って……』



「私ね!もう疲れたの!」

嘘。


『え?』


「唯人君って私に秘密ばっかり作るし、やきもちすごいしめんどくさくて!」



嘘だよ。


「それに」


唯人君




「私ね、雅人君の方が好きになっちゃった!」



嘘だよ。


『は?嘘だ…』


「嘘じゃないよ。今日、雅人君と遊園地に行ったの。そこでね?キスもしたの。びっくりしたけどね?唯人君より上手だったしそれに……」



唯人君…




「唯人君のこと、嫌いだから、私」


唯人君……




「だから、別れて」


唯人君


「それだけ!じゃあね!」



『おい!夜深!なんだよそれ!そんなこといきなり…信じられるわけないだろ!』



「バイバイ…」


『おい!夜深!っ…夜』


私はケータイの電源を切った。



唯人君
唯人君
唯人君…


「好き…」



好きだよ。

嫌いだなんて
嘘に決まってるよ。


でも、私の好きは、唯人君を傷つける。


だから、お終いにした。
私から。




「好き…好き…好き。好きだよ…唯人君…好きだよ」



唯人君
唯人君
唯人君



もう、君を傷つけたくない。


ただ、それだけを願って


またわたしは、君を傷つけた。



ごめんね。
ごめんね。唯人君。


もう、いいよ。

手を離していいから。