「夜深」




古典の授業が終わって、そう名前を呼んだのは






「雅人君…」



雅人君だった。




できれば唯人君の前で私に話しかけて欲しくない。




でも、雅人君はわざと唯人君に見せるかのように私に話しかけてくる。




私はすぐそばに座る唯人君が気になって雅人君の話は上の空で聞いていた。




「いいだろ?夜深」




「うん………って…へ?」




今、なんて?





「よっしゃ!じゃあ日曜日、夜深のマンションに迎えに行くから!」




「ちょっ!雅人君!」




「まさか夜深が唯人の前でOKしてくれるなんてな」




「え…」





私はその言葉を聞いて、固まった。





OK?



何…のこと?




私がキョトンとして雅人君を見つめると、ガタンと大きな音をたてて




誰かが立ち上がった。





「……何だよ、唯人」




やはり唯人君





修羅場だ…