「もしかして聞いてた?」
ばらまいてしまったプリントを揃えて職員室に届けた後、職員室の入口で待っていた小池君にそう聞かれた。
「何を?」
私は小池君に冷たく言い放ち、廊下をすたすたと歩く。
「ちょっと…相澤さん!」
素っ気ない態度をとったのに、小池君は私を追いかけて来て手首を掴んだ。
「…俺と唯人の会話。聞いてた?」
「……」
「やっぱり…」
それから彼は申し訳なさそうにポリポリと頭をかいた。
「…本当言うと、相澤さんのことまだ好きだよ。でも大丈夫だから!さっき言ったことは気にしないでいいから!だからさ…」
「…気にしてないよ」
「え…」
「気にしてない。ちょっと…びっくりしただけだから…」
「…よかった……」
「うん…だから…手、放してもらえる?」
私は俯いたままボソッと言った。
「あ!ごめん!」
「ううん」
手首を放してもらった私は恥ずかしくて、その場に小池君を置いて早足で一人教室に戻った。